女王の愛したメルヘン童話(仮)

 

 

 

 

TITLE

 南国風味な白雪姫?

CAST
 

 白雪姫

やぶ(王様)

 王子

功拳(旅人)

 小人@

ティカ(旅の劇団員)

 小人A

サワ(旅の劇団員)

 小人B

マイマイ(旅の劇団員)

 継母

かりん(姫)

 継母の手下?

はづき(侍女)

 狩人

タロー(旅の剣士)

 

 

 

STORY

 

 かりん姫の決意 〜さようならお父様〜

 

 南国風味なある国に、それはそれは可愛らしいお姫様がいました。お姫様はかりん姫といって、大層みんなに愛されていました。

 幼くして母をなくした姫は、優しい乳母に育てられ、心優しく成長しました。

 そんなある日、姫はインターネット通販で『何でも知ってる不思議な鏡』を購入しました。

 最近国内が荒れていると感じていた姫は、早速鏡に聞いてみることにしました。

「何でも知ってる鏡さん。不思議な不思議な鏡さん。最近国中が荒れているような気がするのはなぁぜ?」

 くるくるくるりんと回って、可愛くポーズを決めてみますが、鏡はうんともすんとも答えません。

「ちっ……。」

 ガシャンッ ゴスゴスゴス

 なにやら舌打ちのような音と破壊音が聞こえた気がしますが、気にせずお話を進めましょう。

「姫、かりん姫、腹グレーですわ。」

「あら、乳母の娘で侍女頭のはづき。この鏡ったら不良品なのよ?うんともすんとも言いやしない…片付けてちょうだい。」

「妙に説明的な台詞ですね。まぁいいですけど。」

気にする様子もなく、さっさと壊れた鏡を片付けるはづき。思い出したように会話を続けます。

「さっき鏡に尋ねてたことですけど…。」

「国中が荒れている理由ね?」

 くるっと振り返って首を傾げて見せるかりん姫。あぁ、可愛い。

「えぇ。答えは簡単。税金が高いからですわ。」

 ピシィィィィィィィィィッッ

 かりん姫の目は白抜きに、右手は口元に、背景はベタと雷でお願いしたい。ここで恐ろしい子という声は聞こえてきません。念のために。

「何故?何にお金を使っているというの?お城はこんなにぼろいのに?この間のスコールのときなんか雨漏りまでしたのに信じられない!!お城だけじゃないわ。デザートやおやつの果物だっていつもバナナやマンゴーばかりじゃない。まぁまさに地産地消。素晴らしいけど、決して贅沢ではないわ。姫なのに、たまにはりんごやみかんが出されたっていいじゃない!!」

 長い台詞をがんばったかりん姫。血圧があがってほんのりと上気した頬がまた可愛い。

「確かに、かりん姫は浪費家ではありませんし、城などの設備にお金が使われた形跡はありません。しかも王家の貯金残高なんてしれてます。ということは?」

 王家の貯金残高がたいした額でないのはヤバイのではないかとも思うわけですが、そこは今回おいておきましょう。問題は搾り取られた税金がどこにいったかということなのです。少し考えてかりん姫は何かに気付きました。

「………お父様ね。」

 ミシッ

 かりん姫の手元のテーブルから不穏な音が…。

「姫、これ以上物を壊さないでください。たださえお金がありませんから。」

 横目でテーブルの損傷具合を眺めながらため息をつくはづき。姫は気にする様子もなく、決意を漏らしました。

「……こうなったら殺るしかないわね。」

 腹グレーさ大奮発なかりん姫。え、殺るんですか?(汗)

 

 こうしてかりん姫は鏡(不良品)に言われるまま(?)王を暗殺することにしました。セオリーな展開です。

 まずは狩人…はあずさ○号を歌いだすので、旅の戦士を雇って森で殺してしまうように言いつけました。

「いい?ちゃんと森…というか熱帯雨林に連れて行くのよ?ピラニアや毒蜘蛛や毒蛇がうじゃうじゃの熱帯雨林よ?」

 かりん姫は念を押して言いつけました。

 しかし言いつけられた旅の戦士は微妙にやる気ナシです。

「へーへー。まぁとりあえず熱帯雨林の人目につかないところで殺ってしまえばいいんだろ?」

 それで良いからとっとと行け。と旅の戦士は放り出されました。

 旅の戦士は言われた通りに熱帯雨林に連れて行こうと、王を狩りに誘い出しました。狩り、別名ガールハントともいいますな。

 熱帯雨林の奥へ奥へと美人がいるからと連れて行きましたが、なんだか面倒になったので馬だけ奪って放って帰ることにしました。前金はそれなりにもらったし、こんなところで1人、生き残れもしないだろうから良いと思ったのです。

 

 その頃お城では。

「これですっきりしたわね。」

 にっこりと満足そうなかりん姫。旅の戦士が首尾よく事を運んだことを疑いもしてません。

「そうですねー。ん?……いえ、どうやら失敗したようです。熱帯雨林の方から王様のラッパの音がします。」

 聞こえたはづきの耳も耳だが、熱帯雨林の中でラッパを吹く王も王ですね。ラッパが聞こえるということは、王は生きているようです。

「ちっ…仕損じたか…。」

 かりん姫、、、えげつない顔になってます。(汗)

「帰ってこられても困りますし…何か手を考えますか?」

 えげつない顔のかりん姫に動じることなく次を考えるはづき。どうやらかりん姫のえげつない顔にも慣れっこのようですね。

「ん〜あの熱帯雨林から出てこれるとは考えにくいし…とりあえず放っておきましょう。」

 確かにピラニアがうじゃうじゃ毒蛇毒蜘蛛盛り沢山の熱帯雨林。しかも馬もなし。帰ってはこれないでしょう。

 

 ん?王様のラッパの音が止みました。何かあったのでしょうか?

「わぁ〜あなたラッパ上手ね〜。」

「ほんと、お上手だこと。」

「身なりも良いし、貴族か何か?」

 王様は三人の女の子に囲まれていました。

「君達は?」

 王様、とりあえず女の子だったら良いんですか?こころなしか旅の戦士の時とは対応が違うようです。

「私達はぁ〜国から国へとぉ〜…」

「もうティカはしゃべるの遅すぎ。」

「私達は旅の劇団ですわ。私はマイマイ、団長よ。」

 一人は天然。一人はツッコミ。一人はまとめ役。三人が集まって旅の劇団(?)だそうだ。

「俺はこの国の人間だが、道に迷ってしまったんだ。街まで連れて行ってくれるとありがたい。」

 狩りに来たはずなのに、たいした獲物もいなくて…などと言っている。たいした獲物でないと言われた彼女達はまぁ十人並みってことなのだろう。面食いの酷いヤツだ。

「いいんじゃない?ここであったのも何かの縁だし。あ、私はサワ。よろしく。」

「仲間が増えたらぁ〜楽しいよねぇ〜。私はティカぁ〜。」

 というわけで旅の劇団(?)と合流した王様は、見事街にたどり着いてしまうわけなのです。これはかりん姫やはづきにとって計算外でした。

 

 どすどすどすどすどす

 すごい音を立てて小さな物体がボロイお城の廊下を突っ走っていきます。そんなに音を立てたら壊れますよー。

「はづきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!」

 どうやら突っ走っていった物体はかりん姫だったようです。

「どうしたんですか?あんまり走ると明日は筋肉痛ですよ?」

 図書室で愛蔵の本達を愛でていたはづきは、少し面倒臭そうにかりん姫に振り返った。いや、仮にもご主人様なんだからさぁ・・・。

「カードの支払い請求書が来たの!!」

「そりゃ、使えばくるでしょう?」

「私、こんな店知らないわよっっ!!」

 ビシッと示された利用明細。そこにはおおよそかりん姫とは縁もゆかりもなさそうな店名が・・・。

「ちっ・・・ヤツか。」

 今度ははづきさんですか、、、えげつない顔ですよー。

「わかりました。王様がどこにいらっしゃるかわかりましたから、私が止めをさしてきましょう。」

 頼もしいはづきさんの言葉に、かりん姫は心をときめかせました。うっとりと黒いわぁ〜とかつぶやいてます。え、ソコにときめいてるんですか?(汗)

 さてさて、止めを刺してくると宣言したはづき。カードの利用明細から王様が行きつけの娼館にいることを突き止めました。いや、モロに店名が書いてあったんですけどね。

「ここはやはり絞殺が手っ取り早いか・・・。」

 なんだか物騒なことをブツブツとつぶやいてます。

 はづきは奥の隠し扉を通って通路を進み隠し部屋に入っていきます。部屋の扉には髑髏マークが。。。げふん。

 小一時間ほどが経過したでしょうか?髑髏マークの扉が開き、中から綺麗な貴婦人が・・・ん?はづきさんでしたか。普段の姿からは想像もつきませんね。化けたもんだなぁ・・・。あわわわわ。パットがずれてますよ〜。

 さてさて、お城を出たはづきは娼館へと向かいます。途中すれ違った人が、見ない顔だねぇ〜。とか、あんな美人どこに隠れてたんだ。とか好き勝手に感想を述べていますが、どこ吹く風というか、素無視のようです。

 娼館に着いたはづきは女将にわけを話し、王様の部屋に堂々と入り、新入りなんですぅ〜とか何とか言いながら髪を縛っていた革紐でぎゅぎゅぎゅっっvvと、王様の首を絞め、意気揚々と城に帰っていきました。

 驚いたのは様子を見に来た旅の劇団員達でした。女将に教えてもらった部屋に入ったら青紫の顔をした王様が転がっていたのですから。

「昼寝とかしてるのかなぁ〜?だったらじゃましたらダメだよねぇ〜。」

 この青紫の顔と首に巻きついた革紐を見て昼寝だと言ったのはもちろん天然娘のティカでした。

「ちょっヤバイって。この革紐ほどかなきゃ。」

 状況を理解して革紐を解こうとしているのはサワ。君が正しいと思うよ。うん。

 と、いうことはマイマイは・・・?

「女将さん〜これどうやって作るんですの?すごくおいしい〜。」

 下からそんな声が聞こえてきます。どうやら女将さんに何かご馳走になってるようです。食い意地がはってるなぁ・・・。何しにきたんだか。

 そんなこんなな間にサワが革紐を解いて、王様は無理矢理息を吹き返したようです。しぶといですねぇ。

 そしてまたカードを使って、生存がお城にばれるわけです。女将にしてみたらお得意様なので生きてて良かったような、はづきが怖いので生きてて良くないような。微妙な心境でしょうね。

 さてさて、王様が生きているとわかったなら放っておくわけにはいきません。次の作戦を考えねばなりません。

「絞殺は失敗したわけだから、残るは刺殺射殺轢殺撲殺薬殺毒殺…。薬殺と毒殺は違うのかしら?」

 またもや物騒なことをブツブツと呟きながらお城の廊下を歩くはづきの姿が見られます。それをそっと柱の影から見守るかりん姫。

「素敵…。」

 ぽっと頬を赤らめてる姿は一見大層絵になるような気がしますが、それはそれで間違ってる気がします。えぇ。

 キュイーンとかバチバチとか光ったりとかどうやらはづきは例の部屋で工作をしているようです。何を作っているのでしょうか?机の上は金属片やら導線やら…ガラスのようなものも見えます。

「ふぅ…これで完成ね。」

 汗をぬぐったはづきは今度は自分を創り始めたようです。先日の出来映えもなかなかでしたが、今日も素敵に別人に仕上がっているようです。

 そしてまた今回も街の人々の声を素無視しながら娼館へと向かいます。前回顔を見られてしまったので、はてさてどうしたものかと悩みつつ目的地に到着したようです。

「あぁ、君はこの間の美女じゃないか。この間はいつの間にやら消えてしまっていたし、それっきりみかけないし、女将に聞いてもはぐらかされるし…どこに隠れていたんだい可愛い人。」

 娼館に入ろうとしたところを後ろから呼び止められました。あれ?王様ですか?

 さり気なく抱かれた腰にはづきの眉間に皺が…にっこり笑顔をどうにか保ちつつ目が笑ってないです。怖ッ…。

「あら、ちょっと隣国まで旅に出ておりましたの。こんなところで立ち話も不自然ですわ。どうぞ中にお入りになって。」

 嘘八百。でも真実味を帯びてすらすらと紡がれていく言葉に疑う様子もない王様。目が笑ってないことにも気付いてないようです。

 はい、お土産です〜。などといいながらはづきが何かを王様に手渡しました。早く開けるように促しながら、隠れているものの右手になにやらスイッチのようなものを握り締めているようです。

「おぉっ。コレはっ!?」

 感嘆の声をあげ、王様は取り出したものをスチャっと装着しました。

 ぴしゃぁぁぁぁっっ!!

 ………???何かが今光りました。あたりが一瞬見えなくなるような光でした。はづきの手には握り締められ、思いっきり押されたスイッチが…。

「フッ…任務完了。」

 ぱさっと髪を掻き揚げ、王様に触られた場所をぱっぱと払いながらはづきは去っていきました。

 そしてまた驚いたのは、また様子を見に来た旅の劇団員達でした。例によって女将に教えてもらった部屋に入ったらピクピクした王様が転がっていたのですから。

「昼寝とかしてるのかなぁ〜?だったらじゃましたらダメだよねぇ〜。」

 このピクピクしているのを見てまた昼寝だと言ったのはもちろん天然娘のティカ。

「いや、ヤバイって。また死にかけてるし。」

 状況を理解してどうにか介抱しようとしているのはまたもやサワ。君が正しいと思うよ。今回も。

 と、いうことはまたしてもマイマイは・・・?

「これも作り方教えてください〜これもすごくおいしい〜。」

 下からそんな声が聞こえてくるわけです。今回も女将さんに何かご馳走になってるのね。やっぱり食い意地がはってるんだなぁ…。

 そしてサワはどうやら王様のかけているメガネが原因だと突き止めたようです。近くにあった棒でメガネを外し、気付け薬を鼻をつまんで口に放り込み、無理矢理王様の息を吹き返させたようです。

 なんだか王様が憐れな気がしてきました。

 そしてまたまたカードを使って、生存がお城にばれるわけですよ。再び振り出しに戻るといったところでしょうか。

「クソッ…またしても仕損じたか…。」

 再びはづきatお城なわけですが。はづきさん素敵に毒づいています。そりゃあ二度も仕損じているわけですから、毒づきもするでしょう。しかしそれにしてもブラックな横顔…。

「こうなったらもうアレしかないわね…。」

 またもやブツブツと呟きながら、例の部屋に入っていったかと思うとすぐに出てきて、また別の部屋へと入っていきました。さてさて、今度は何をするというのでしょうか。

 チーン

 しばらくすると軽薄な音が響き渡りました。どうやらこの音はオーブンの音のようです。はづきの入っていった部屋からもくもくと煙が溢れてきています。香ばしいような煙たいような…。

「この煙は一体何事?」

 てとてとと歩いてきたかりん姫が煙に気付いたようです。扉から漏れてきた煙が、だんだん廊下を埋め尽くしていきます。

「一体…何の煙なの?気持ちワルイ…。」

 ばた…

 あぁぁぁ。かりん姫が倒れてしまいました。そんなにすごいにおいなんですか?ただの煙じゃないんですね。

 あ、扉が開いてはづきが出てきました。自分はちゃっかりマスクとゴーグルを装着してますよ。あーあ、かりん姫を蹴っ飛ばしました。どうやら煙で足元が見えなかったみたいです。

 かりん姫を煙のマシな所まで引きずって、窓を開けて換気をしたはづきは、なにやら小包をもってお出かけのようです。例によって変装済みなのでまた王様のところへ行くみたいですね。

 

 場所は変わっていつもの娼館。そしていつものやりとりが…。

「どこに隠れていたんだい可愛い人。君に会いたくて眠れぬ夜をいくつ過ごしたことか…。ほら、部屋にお入り。あぁこんなに冷たくなってしまって…俺が暖めてあげよう♪」

 腰を抱き寄せられて思わず素の顔をしてしまいそうになるはづき。ここはぐぐっと我慢の子です。熱帯のこの国で冷たくなるわけがなかろうと殴りたいところも我慢です。軽く王様の腕から逃れつつ持ってきた包みを差し出しました。

「はじめて作りましたのよ。召し上がっていただこうと思って。」

 にっこりと愛らしい笑みをはりつけたはづきに対して、さすがの王様もたじろいでます。一体差し出されたコレはなんなのか???目を擦ってみてもやはりわからないようです。

「お口に合えば良いんですけど…アップルパイ♪」

 アップルパイィィィィィィ!?

 あぁ、王様の心の叫びがここまで聞こえてくるようです。

 王様は我が目を疑いました。それでもはづきがにこにことしているため、ここで退くわけにはいきません。

 ここはもうやるしかない。ここで退いては男が廃る。イチかバチかっっ!おぉっっ神よっっ!!!

 王様は掛け声をかけたかのように勢い良くアップルパイを口にしました。

 

 バタッッ!!!

 

 そしてまたまた驚いたのは、またまた様子を見に来た旅の劇団員達でした。例によって女将に教えてもらった部屋に入ったら真っ青な顔をした王様が転がっていたのですから。

「また昼寝とかして…以下略。

 例によってサワが介抱しようとしましたが、毒消しを飲ませても、気付け薬を飲ませても、王様は目を覚ましそうにありません。毒は消せても殺人的な味には勝てなかったようです。恐るべしはづき…。

「王様死んじゃったの〜?昼寝じゃないの〜?」

「王様に何があったのかしら?まぁ死んでしまったものは仕方ないわね…。」

「憎まれっ子世にはばかると申しますけど、あっさりお亡くなりになりましたわね…。」

 旅の劇団員達はそれぞれに言いたい放題ですが、それなりに悲しんでいるようです。

「ねぇ〜昼寝じゃないのぉ〜?ほんとに死んでるの〜?」

「残念ね。せっかくいい金づるになると思ったのに。」

「しかし不審死とは最後まで迷惑な人ですこと…。」

 その場に居合わせたのも何かの縁ということで、王様のお葬式を彼女達がすることにしました。不幸な最期でしたが、せめて綺麗に送ってあげたいと思ったのです。

「昼寝でしょ〜?ほら、寝た子は重いって言うじゃない〜。」

「なんで私達がおしつけられなきゃならないわけ?その場に居合わせたってだけで…ありえない。」

「女将さんってばひどいですわ。なんでワタクシ達がゴミ捨てに行かなきゃならないんですの?」

 旅の劇団員達の悲しみは計り知れません。あまりの悲しみに涙も出ないようです。

 彼女達は王様を乗せた荷車を押し、とぼとぼと熱帯雨林へと歩いていきます。どうやら人の来なさそうなところに埋めるようです。

「もう〜しんどいよ〜。この辺で〜。」

「そうよね、この辺で良い?」

「これ以上荷車が進みそうもありませんし、さっさとほってしまいましょう。」

 王様を乗せてきた荷車を道に、王様を草むらに放置し、彼女達は道の脇に穴をほり始めました。えっさっさーほいさっさーと不思議な歌が聞こえてきます。

 パカランパカランパカラン…

 ん?なんか馬のひづめのような音が?今日はAばれん坊将軍の放送日でしたっけ?

 パカランパカランパカラン…ドスゴスバキッ

「うわっ!」

 どこからともなく現れた白馬が、草むらに転がされた王様に気付かず蹴飛ばしてしまったようです。

「すまない。そこのお嬢さんたち怪我はありませんか?」

 いえいえ、あなたが蹴飛ばしたのは彼女達じゃありませんから。

「大丈夫よ。それよりもあなたはどちら様?」

 馬を下りた白馬の男はつかつかと彼女達に歩み寄った。

 げしっ

 哀れな王様はまたも蹴られたようです。ん?なんか王様が動いてる気が…。

「あぁ、失礼。功拳と申します。旅人ですよ。」

 ゲホゲホゲホッ

 ゲホ?誰が?

「ほら〜やっぱり昼寝だったんだって〜。」

「は?ティカ、いきなり何を言ってるんですの?」

 ティカの指差す方を見ると…

「はいぃぃぃぃぃ!?」

「ゾンビ?ゾンビか!?」

「いやーミイラとりがミイラー(意味不明)」

 そこには咳き込んでいる王様の姿。死んでなかったんですか?

「すごいアップルパイもあったもんだ…。」

 ぼそりとこぼす王様。アップルパイだとは思ってるんですね。

 どうやら馬に蹴られ、功拳に蹴られ、ショックで止まった心臓がさらなるショックで動き出したようです。

「あ、あなたは…。」

 功拳が何故か王様の顔を見て動揺しているようです。知り合いでしょうか?

「ん?俺はなんでこんなところにいるんだ?あぁ、そうか。あまりの味に気を失っていたのか。さらに、あの場所に居ると何度も危険な目にあうから心配した君達が連れ出してくれたのだね。心配をかけてすまなかった。ありがとう。」

 自分勝手な解釈をありがとう、王様。

「そういうことにしときましょう。それが面倒でなくて良いですわ。」

「昼寝でしょ〜?」

「違うから。もうティカは黙ってて。」

 言いながら彼女達はさくさくと穴を埋めていきました。これ以上面倒なことには巻き込まれたくありません。王様も生き返ったことですし、さっさと逃げるに限るでしょう。

「じゃ、私達はこの辺で…。」

「さようなら〜。」

 なんで〜?と、まだぼやぼやしているティカを二人で抱えて猛スピードで去って行きました。そこに残されたのは中年男が二人…と白馬と荷車。

「えぇっと…私は功拳。旅人です。あなたは?」

 功拳さん、とりあえず自己紹介をしてみます。

「俺?男に名乗る名前はないが…「じゃあいいです。」やぶと呼んでくれ。」

 どうでもいいですけど中年男ズ台詞が被ってます。

「…じゃあやぶさん、私はこれから隣国へ行くのですが一緒に行きますか?旅慣れている風でもないですし、馬無しではこの熱帯雨林を抜けられないでしょう?」

 功拳さん、怪しい人だと思いましたが実はいい人なんですか?

「隣国…この国に居てもおもしろくないし、隣国には美女がたくさんいるかもしれないな…。よし、行こう。」

 動機はどうであれ、王様は功拳という謎の旅人と共に隣国を目指すことになりました。

 

 一方お城では…。

「何でも知ってる鏡さん。不思議な不思議な鏡さん。王様がどこにいるか教えてちょぉだい?」

 くるくるくるりんと回って、可愛くポーズを決めてみますが、鏡はうんともすんとも答えません。

「ちっ……。」

 ガシャンッ ゴスゴスゴス

「かりん姫、また鏡を買ったんですか?この間不良品だったんでしょう?」

 ため息をつきながら片付けるのは私なのにとはづきがぼやいています。

「新商品なのよ!!今度は鏡は鏡でもコンパクトだったの!」

「………。」

 浪費家の血は確実に受け継がれていると確信したはづきでした。

 めでたしめでたし。

 

 

めでたし???    

 

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