ぼくはペット
ピンポーン 夏休みが終わり、学校が始まった。そういえば、最近連絡とってないやと思い立ち、メールを打ったり、携帯に電話をかけること数十回。 「でないよ…。」 そう、でないのである。完全に音信不通。どうしたのだろうか?最近連絡を取っていなかったことを怒っているのだろうか。 と、言うわけで、冒頭のチャイムにつながるわけだ。 「はーい。」 でてきたのは仁科先生だった。ん?なんだか片付けか何かの途中だったようだ。 「こんにちは、松川です。突然お邪魔して…「遅いッ!!!」 僕の言葉を遮るように一喝された。はい?遅い? 「アンタ遅いわッ遅すぎるッ!」 遅い遅いと怒る勢いに気圧されながら、おずおずと玄関をくぐる。 「先生引越しでもするんですか?」 「はぁっ!?」 先生のリアクションからすると違うようだ。しかし、引越しをしないにしてはすごい散らかり様… 「アンタ、サラから何も聞いてないの?」 「へ?いや、夏休み終わってから、電話かけたりしたんですけど、音信不通で…」 それから、先生は少し考えて、口を開いた。 「サラは国に帰ったわ。9月から新学期でしょ?あのこまだ学生なのよ。」 はい?学生?サラさんが?…いや、それより帰った?いつの間に? 「なるほどね…帰国もギリギリになって思い出してバタバタと出て行ったけど、まさか何にも言わずに飛んで帰ったなんて…さすがと言うかなんというか…」 さすがの仁科先生も呆れ顔である。 「あーもしかして、それでこの荷物なんですか?」 この散らかり様はどうやらサラさんの荷物らしい。 「そうなのよ。あのこ間に合わないからって、とりあえず、身体一つで飛んで帰ったものだから、後に残った荷物全部送ってやらなきゃなんないのよ。」 まぁ…それにしても、たくさんの荷物を置いて帰ったものだ。しかし、こんなに置いていって向こうで困らないのだろうか? 「あ、手伝いますよ。ダンボールとか重い荷物大変でしょ?」 いくら、先生とはいえ、さすがにこのダンボール達はキツイだろう。本やら辞書やらノートやらえらくたくさん詰め込まれている。 「大丈夫よぅこれくらいっおばさん扱いしないでっ」 いや、おばさん扱いしてるわけじゃないんですけど…て、僕の心配をよそに、よりにもよって一番重そうなダンボール箱を持ち上げようとしている。 「先生危ないってっっ」 「わわわわわっ……」
グキッ どっし――――んッッ
ふぅ…危機一髪。ダンボールは落下を免れなかったが、先生は無事キャッチした。ダンボールもまっすぐに落ちたから、恐らく、本が痛むとかいったことはないだろう。 「先生、危なかったでしょ?別におばさん扱いしたわけじゃなくて、危ないから…」 先生をキャッチしたまま座り込んでしまっているので、ちょうど先生を背後から抱えるような体勢である。落ち着かないよ(汗) 「あ…」 あ?ありがとうですか? 「足挫いた…」 は?足?なんですとーっ!?
|
<つづく>
当館に掲載されているあらゆる内容の無許可転載・転用を禁止します。
|