ぼくはペット
ちゃーんちゃんちゃーんちゃーんちゃ♪ちゃーちゃーんちゃー♪ 暑い夏の昼下がり。携帯電話が僕を呼ぶ。 「あ゙―づーい゙ーっっ!!」 コンビニの袋を提げて仁科先生が帰ってきた。確か今日は陸上部の試合だったはず… 「「おかえりなさい〜」」 こんな早くに試合が終わるはずない。きっともう一人の先生に押し付けて帰ってきたに違いない。 「うわっなんで松川がいるのよぅっ。」 よれよれと歩きながらぶちぶち文句をいう。あからさまに苦虫を噛み潰したかのような表情だ。 「そんな事言いながら、袋の中に僕の分のアイスもあるんでしょ?」 「これはっ私が今夜お風呂あがってから食べるのよぅっ。」
「そういう素直じゃないところ好きだよ。せんせ。」(にっこり)
ピシッッ あっ、固まった。 うーん…僕ってばこんなキャラじゃないんだけどなぁ…どうも、ノリが冗談くさい(苦笑)いつもやられっぱなしだから、たまには反撃も良いでしょ。 「先生?まだ固まってるの?」 はっと我に帰る先生。 「うわー松川のバカーっ鳥肌っめっちゃ鳥肌たった〜っっチキンスキン〜っっ!!」 ぎゃぁぁぁ〜と叫びながら、先生は奥へと去っていった。そんなに鳥肌もの? 「宏久〜アイス溶けるよ?食べよ〜。」 ぽつんと落とされたコンビニの袋をがさごそと漁りながらサラさんが言う。いや、勝手に漁っていいんですか?後で怒られても知りませんよ? 「私ストロベリー♪宏久はバニラだよね?」 僕の心配をよそにアイスは配られていく。そして… 「あ゙ーっっ私のストロベリーっっバニラーっっ!!」 買い主が戻ってくる頃には、素敵になくなっているわけで。あ、もちろん本人の分はちゃんと冷凍庫に入れてあるけど。 そんなことを繰り返しながら、受験生の夏は半分を過ぎようとしていた。 受験生ならではの勉強の配分と言う理由も手伝って、盆を過ぎた頃から、サラさんと連絡を取ることも少なくなり、しだいになくなっていった。
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<つづく>
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