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ぼくはペット

 

 

 「いつのことか知りたい?」

思わずぶんぶんっと顔を縦に振った僕を連れて、彼女は電車を後にした。

彼女は僕に会ったのが初めてではないというが、いったいいつの事だろう?ぼくには皆目検討がつかない。そもそも、アングロサクソン系の美人なんて、めったにお目にかかることがないのだから、覚えていないはずがないのだが…

彼女はどうやらどこかに電話をかけているらしかったが、話が済んだらしく、携帯をバッグにしまい僕を手招いた。

「友達が迎えにきてくれるって。ちょっと待ってね。」

 ほどなくして、RAV4が目の前に滑り込んできた。ちょっと運転荒いかも…微妙に身の危険を感じる。
 キュッキュッ
軽いブレーキ音をさせてその車は止まった。あたりが暗いので、中の様子はわからない。
 ゆっくりと、ウィンドウが下がる

「「えっ!?」」

運転席に座る人物と声がハモった。

そこに座っていたのはなんとっっ!!

「仁科先生っ!?」「松川君っ!?」

 そりゃぁもう驚いたのなんのって…そこに座ってたのは、僕の通っている、県立東市東高校の日本史の先生である『仁科亜矢子』先生だった。

「えーっと…知り合い?」

 二人の様子から察したのか、ヤな予感をもろに表情に出したまま僕を劇的な出会いへと導いたサラが口を開いた。

「ちょ…っもしかして、もしかしなくても、あんたの拾ってきたのってコレっ?」

 いや、驚く気持ちもわかりますけど、生徒にコレはないでしょ…

「あはは。そうみたい〜。」

 あっけらかんと笑ってごまかそうと試みているような…っていうか、そうみたいってあなたもコレ扱いですか(泣)

「はぁ〜仕方ないわ。とりあえずどこか落ち着けるところに行くわよ。乗って。」

 えっ、乗って?これにですか?運転手が仁科先生だとわかってますます危険な感じが…
僕は言いようのない不安を抱えたまま、車に乗り込むこととなる。

***

「で、どういうことか説明してもらいましょうか?」

 あの細身の体の、どこにあれだけの食物が詰め込まれているのだろうか…恐ろしいほどの量を蓄えた先生は、食後のコーヒーをすすりながら話を振った。

「えーっと…さっき電車の中でこけそうになったのを助けてもらって…」

 ちょっと窓の外なんかを見ながら話したりしている。すごく誤魔化してる風。

「ほほぅ…こけそうになったのを助けられたぐらいで、お礼に夕飯奢るんだ…って、それだけじゃないでしょ?サラ?」

 言外に、早いとこしゃべっちまいな。というオーラが…先生怖いです。

「えーっと…実は半年前…」

 そう、僕とサラが初めて会ったのは半年前のこと。僕が例によって友人と遊んだ帰り、道に迷ったサラに呼び止められたのだった。しかも英語で。

「…というわけで、二度も助けられたし、お礼しなきゃなぁと…英語だと答えてくれる人がなかなかいなくてさ〜」

 きっと、尋ねた人が悪かったのだと思う。だいたいあの辺りってかなり大きな街だし…

「なるほどね。しかしあんたよく覚えてたわね。人の顔とかすぐに忘れるのに。」

「失礼ねぇ…そんなことないわよぅ。」

 二人の会話を聞いていると、漫才を見ているようだった。先生は学校より性格悪いし…
 そのまま世間話やら最近の国際情勢やら、さまざまな話題を三人で話し込んだ。同級生とはなかなか出来ない、レベルの高い、教養ある会話だった。
 その後、話し込んで日が変わろうとしていることに仁科先生が気づき、家まで送ってくれた。このことは学校では秘密にするようにと、しっかり釘をさされた。

日常に物足りなさを感じていた僕には、とても充実した一日となった。

 

 

 

 <つづく>  

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