ぼくはペット
冬の寒い日だった。 僕は突然彼女に別れを告げられた。本当に突然の事で、言葉など喉を通らなかった。 冬がすぎればやがて春が訪れ、季節は移り変わってゆく。世間は出会いの季節を満喫する。それでも、僕の心というものはそうもいかないらしく、春を知らぬ永久凍土となる。 今日もまた、いつもと同じ日々の繰り返し。この四月から受験生なるものになってしまったものの、確たる自覚もない。まぁ、一応進路希望っていうのがないわけでもないんだけれど。いわゆるイイトコロでいいや。みたいな。
ガタンゴトン ガタンゴトン 電車に揺られるっと言うと、なんだかローカルな電車のような気がするが、とりあえずは本線である。この電車に乗らなければ、僕の人生は大きく変わっていたかもしれない。そんな出会いが、出会いの季節と無縁な気分満喫の僕に待っていた。 それは、K市に遊びに行った帰りのことだった。用事があるという友人と別れ、僕は一人、家に帰るためにくだりの快速に乗った。
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<つづく>
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