☆Happy Christmas☆


 by響万音 (in夢の館)   

 ***

「けんやのあほーーーっっ!!」

 ガタン ぼふッッ

 投げつけられたクッションは外に飛び出すことなく、無常に閉じられたドアに衝撃を与える。

 本日は12月24日。いわゆる『クリスマスイヴ』である。日頃お互い仕事があり、さらに年末ともなるとなんだかんだと電話さえままならない状況が続く中、今日だけは一緒に過ごそうって約束してたのにっっ

『オンライントレードでトラブルがあったらしい・・・』

とかなんとかいっちゃって、ささーっと仕事に行っちゃっうなんて。もう、アホとしか言いようがないわよバカッ。

 忙しかったり、デートがキャンセルになるなんてよくある事。そりゃ、一年も半同姓みたいにしてれば、慣れてもくるわ。でもねぇ・・・。

「だからっ今日はイヴだっつってんのよっっ」

 バシッッ・・・ぼふ

 さらにドアに投げつけられたクッションはさっきよりも勢いよい音を立てて下に落ちた。

 むしゃくしゃしていたが、それでもしなくてはならない事は山積みで、普段から忙しくてできない分、年越しに向けて家を片付けたり・・・独りでコツコツとしていると、だんだん怒りが収まり、今度は悲しくなってくる。

「あーもう私なんてどうでもええんかなぁ・・・そうやんなぁ・・・私と水族館行くより仕事してた方がやりがいあるやろうし・・・でも・・・水族館行きたかったなぁ・・・イルカぁ・・・。」

 ブツブツブツ・・・・・・

 お昼にはケリがつくだろうとか言ってたのに、電話がなる気配もない・・・もう一時だよ・・・おなか空いたなぁ・・・

「よし、ラーメン食べよ。関西人なら『すきやねん』やんなっ。」

 しょうゆ味のインスタントラーメンを作って食べる事にする。卵とねぎは忘れてはいけない。

 ずそそそそそ・・・とラーメンをすする、そしてこんどは鼻を・・・っと失礼。暖かいものを食べるとつい(汗)

「はーおいしかった。とりあえず流しに浸けとくか・・・」

 ラーメンどんぶりは流しに。私はソファに。

 風から隔離された室内という空間は、日が当たるとぽかぽかと暖かかったりする。気分とは逆のぽかぽか陽気と、満腹感からうとうとと・・・

 zzzzzzzzz...........zzzzzzzzz.........

「うわっちょぃっっ(汗)」

 ガタンッ

 ソファから転げ落ちるようにして電話のもとへと走る。そう、電話が鳴ったのだよ。

「ハイ・・・あ、賢哉?へ?なんて?今から駅まで出て来いっ?もぉ・・・20分ほど待ってよ?は?10分で来い?アホちゃうか・・・バス?あーもうわかったわ・・・ん。じゃあね。」

 今から駅まで10分で来いという。どうやら、駅前で車を停めて待っているらしいのだが、今バスが出たことろなので20分もすると次のバスが着てしまうらしいのだ。だったらとなりの商業施設の駐車場にでも入れとけよと思うのだが・・・そこは関西人。小銭が惜しい(笑)注:関西人みんながそうとは限らないが、少なくとも私たちはそうだ。

 ブツブツと文句をいいながら、それでも気分は少しるんるんで用意を手早く済ませる。この際化粧が多少おかしかったとしても、これから薄暗くなるからという事で良しとしよう。

 ***

「もぉ・・・ぜぇぜぇ・・・ありえへんわ・・・はぁはぁ・・・10分って・・・。」

 猛ダッシュで駅にたどり着いたのは電話を切ってから18分ほど経ってからのこと。

 あまりの走り具合に服が多少乱れてしまっている。髪も。ぁぅ・・・(泣)

「急がせてごめんな。ほら、乗って。」

 開かれた助手席に座ると、静かにドアが閉じられる。彼は慌てた様子で運転席に滑り込み、慣れだ動作で車を出した。どうやらバスが来たらしい(笑)

 車はそのまま2号線にでて、東に向かって走る。JRの駅をいくつか通り過ぎると海が見えてきた。

「うわぁ・・・キラキラしてる・・・めっちゃきれいやなぁ・・・。」

 夕日を浴びた海は、風に誘われて揺れ、光をあちこちへと反射させる。赤く、キラキラと輝く水面。

 助手席からなので、海を見るとなると、運転席の方を見ることになる。夕日は背負って走ってるしね。

 無口な彼はあまりしゃべらない。まぁ関西人でもこういう人種は存在するらしい。私としては無口な関西人なんて希少種なのではないかと思うのだが(笑)

 しかし、それにしても今日は口数が少ない。普段はもう少し話してくれるのに・・・。

「なぁ・・・もしかして調子悪いん?」

 微妙に表情もさえないから、もしかして風邪とか・・・。

「いや、そんなことない。少し、疲れてるだけやから。」

 薄く微笑んでそう言った。少し疲れてるぅ?なんか今日のトラブルがすっきりしなかったのだろうか。気になるが、こういうときの彼はしつこく尋ねたところで、きっと答えてはくれないだろう。

 そんなこんな言いながらも、車は海岸線を走る。

「もしかして、水族館行くん?」

 この道をずっと行って・・・と考えてみる。元々今日は水族館に行く約束だったし。

「いや、もう閉まってるよ。残念やけど。そのかわり・・・。」

 ?と思ったら、急に信号を右折。

「へ?ココ?」

 曲がった先にはショッピングモールが・・・

「うわぁ・・・めっちゃきれぇ・・・。」

 思わず溜息が出そうな光の洪水。車を停めるのももどかしくて、エンジンを切るや否や建物へと飛び出した。

 ライトアップされた建物に、巨大なツリー。

「うわぁ・・・見て見てぇ・・・リースついてる。可愛い〜。」

 彼の腕を引っ張りイルミネーションの前を行ったり来たり。

「腹減った・・・。」

 一通りイルミネーションを堪能した私たち(正確には私)は、とりあえず夕食をとることにした。クリスマスだろうが、なんだろうが、ここにくれば食べるのはコレだ。

「熱い〜辛い〜おいしい〜。」

 さて、このセリフでお分かりだろうか?

「・・・って人のキムチ食べるなよ。」

 さりげなく突っ込む彼。私たちは辛いものが大好き。

 さて、なんでしょうか?正解は・・・

「やっぱここにきたらビビンバやんなぁ・・・。」
「やっぱここにきたら豆腐チゲやんなぁ・・・。」

 韓国料理でした〜。

 焼肉もいいけど、それよりもビビンバ。私はビビンバ派。しかし彼はビビンバにこだわらずいろいろその時によって違うものを食べてる。

 クリスマスイヴのムードもなんもない気がしないでもないけど、私たちらしくて良っか(笑)

 私は彼の鍋を突きながら、ビビンバを突かれながら、もうおなかいっぱい。彼はごはんとキムチをおかわりして落ち着いたらしい。

 身長が150ちょいぐらいしかない私と、180もっとある彼とでは消費熱量が違うんだよ。うん。

 そういえば、差があるのはそれだけじゃない。私たちってば実際より年齢を10以上離れて見られることがほとんど。25の私は20前後に見られるし、無口で地味な格好の多い渋い系の彼は28なのに35前後に見られてしまう。二人でいて後ろでこそこそ話されるのもしばしば。彼が人ごみを嫌うのも無理はない。

「なつみ・・・こっちにおいでや。」

 店を出て少しぼぉっと歩いてた私に手を差し伸べる。考え事してると他がお留守になっちゃうんだなぁ・・・気をつけねば。

 差し出された手を取り、後をついていく。横に並ぶというよりは半歩後ろ?フィッシャリーナを通り、さらに海へと向かう。

「うわぁ・・・すごい・・・。」

 思わず言葉を失う。さっきのイルミネーションみたいな豪華さはないけど、すごくスケールが大きくてライトアップでキラキラ綺麗。

「綺麗やろ?まだ見てなかったんやないん?」

 優しい笑みをうかべた彼。外気温の低さに息が白くなってる。

「うん。すっごいきれぇ。この橋クリスマス用にライトアップしててんなぁ。」

 言われた通り、まだ見てなかった。というか、クリスマス用にライトアップされていることを知らなかった。

 世界最長の吊り橋が、赤や緑の光に飾られ人々の目を楽しませている。彼が言うには、クリスマス限定のライトアップで、明後日からは通常の色のライトアップに戻るらしい。

「夏海、これ・・・。」

 彼が差し出したのは小さなギフトパック。開けるように促されてそっと包みを広げた。

「うわぁ・・・めっちゃ可愛い・・・。」

 中身はちっちゃなイルカのノンホールピアス。

「水族館行ってイルカ見たいって行ってたやん?だから・・・。」

 逆光で表情があまり見えなかったけど、少し、照れたような感じだった。

「めちゃめちゃうれしい・・・賢哉・・・ありがとう。」

 マフラーをひっぱって、思いっきり背伸びをして、ようやく頬にキスした。彼の頬は外の空気に冷やされて冷たかったけど、すごく、幸せな気分だった。

Happy Christmas!

 

 ***あとがき***

 メリークリスマスです。遅ればせながら響万音参上つかまつりました。

 どうにかこうにかイヴのうちに上げようと思ってて・・・今0時49分・・・25日の(汗)ダメダメじゃん(滝汗)

 と、とりあえず、まだクリスマスは終わってないので良しということにしてください。はい。

そ、それでは、またどこかでお会いしましょう〜。

響万音(夢の館)     

 夢の館へ行く。 関西物書恋盟へ行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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